愛犬の身体にしこりができてしまったら、悪いものなのではないかと心配になってしまうと思います。
しこりには主に良性腫瘍と悪性腫瘍があり、特に悪性である場合には痛みや転移などが起こることもあるため注意が必要です。
今回は、犬にしこりができる病気にはどのようなものがあるのか、解説していきます。
しこりがある際に考えられる疾患
しこりがある場合には、主に以下のような疾患が考えられます。
・脂肪腫
脂肪細胞が増殖してでき、皮下にできる脂肪の塊で、柔らかく動かせるしこりが特徴です。通常はゆっくりと成長し、周囲の組織への侵入は少ない傾向があります。また、8歳以上の犬に発生しやすいとされています。
一般的に痛みやかゆみは伴いませんが、しこりが大きくなったり、皮膚表面に開口部ができたりした場合は獣医師に相談しましょう。
・組織球腫
赤くドームのような形で、毛が生えないことが特徴です。腫瘍は急速に大きくなりますが、その後、徐々に小さくなっていきます。
3歳以下の若齢犬で発生することが多いですが、高齢犬で見られることもあります。
・乳頭腫、皮脂腺腫
犬の皮膚によく見られ、一般的に「イボ」と呼ばれるものです。高齢の犬に多く見られます。
これらの腫瘍は一般的に悪性ではなく、しこりが小さい場合や犬の健康に影響を与えない限り、治療は必要ありません。ただし、しこりが大きくなったり形状が変化したりした場合は獣医師に相談しましょう。
・乳腺腫瘍
乳腺腫瘍は、乳腺組織に発生する腫瘍で、特に未去勢のメス犬に多く見られます。犬では良性と悪性の割合は半々で、悪性の場合には転移や再発することがあります。そのため、良性腫瘍の場合は摘出手術によって完治することがありますが、悪性腫瘍の場合は外科的摘出と併せて化学療法(抗がん剤治療)が必要な場合があります。
・悪性リンパ腫
免疫に関与する「リンパ球」という細胞が異常に増殖してしまうことで発生する腫瘍です。リンパ節の腫れや全身の不調が見られることがあります。悪性リンパ腫は進行が速いことがあるため、早期診断と適切な治療が重要です。化学療法(抗がん剤治療)が主な治療法として用いられ、犬の種類や病状によって治療法が変わることがあります。
・肥満細胞腫
免疫に関与する「肥満細胞」という細胞が異常に増殖してしまうことでできた悪性腫瘍です。中齢以降に見られることが多いですが、若齢でも見られることがあります。
肥満細胞腫は、しこりや腫瘍として皮膚表面に現れることが一般的で、触れると硬く、しこりの周囲に炎症やかゆみを伴うこともあります。
診断方法
しこりが何であるかを調べるために、病院では
・視診、触診
・細針吸引と細胞診
・血液検査
・エコーやレントゲン、CT、MRIなどの画像検査
などを組み合わせて診断をしていきます。
治療方法
しこりが悪性の腫瘍であった場合には、次のような治療方法があります。
・外科治療
多くの場合、手術による腫瘍の切除が第一選択となります。
・化学療法
外科手術と併用する必要がある場合、また犬が高齢で手術が難しい場合や他の場所への腫瘍の転移がある場合には、分子標的薬などの抗がん剤を使用します。
・放射線治療
外科治療と併せて行う必要がある場合や腫瘍の種類によっては、放射線治療を行うことがあります。
(特殊な設備が必要なため、対応可能な病院は限られます。)
予防法や飼い主が気を付けるべき点
残念ながら、基本的に腫瘍に対する予防法はありませんが、乳腺腫瘍については生理が始まる前、または2回目の生理が来る前に避妊手術を行うことで、高い確率で発生の予防ができることが分かっています。
また、日頃から愛犬の身体に触ることで皮膚にできたしこりを早期に発見し、早くから治療を進めることで、病気の進行を防ぐことができます。
もしも身体にしこりを発見した場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
茨城県つくば市・牛久市・土浦市を中心に動物診療を行う
さくま動物病院
〈参考文献〉
獣医内科学 第2版 小動物編