最近、愛犬や愛猫の「口の中に何かできている気がする」「ごはんを食べづらそうにしている」などと感じたことはありませんか?
犬や猫の口の中にできる“できもの”は、口腔内腫瘍と呼ばれ、早期発見と適切な治療がとても大切です。見た目にはただの腫れや赤みのように見えることもありますが、実は重大な病気が隠れている可能性もあります。
そこで今回は犬や猫の口腔内腫瘍について、見逃してはいけない症状や原因、予防方法、治療方法などをご紹介します。
犬や猫の口腔内腫瘍とは?
口腔内腫瘍とは、犬や猫の口の中に発生する“できもの”のことを指します。この腫瘍には、大きく分けて「良性」と「悪性」があります。良性は比較的進行が遅く重篤化しにくい一方で、悪性は周囲の組織に広がったり、他の臓器へ転移したりする可能性があります。
ただし、見た目だけでは良性か悪性かの判断はできません。小さくても悪性の場合もあり、逆に大きくても良性ということもあります。そのため、少しでも異変に気づいたときには、早めに動物病院での診察を受けることが重要です。
また、腫瘍ができやすい場所については、犬と猫で以下のように異なります。
・犬の場合:歯ぐき(歯肉)、上あご、下あご など
・猫の場合:舌の下(舌下部)、頬の内側、口の底 など
見逃さないで!口腔内腫瘍の症状と早期発見のポイント
口腔内腫瘍は、初期の段階では症状がはっきりと現れにくく、気づかれないまま進行してしまうことがあります。そのため、以下のような変化が見られた際には注意が必要です。
<初期に見られる症状>
・よだれが普段より多い
・口臭が以前より強くなった
・食べ方が変わる(ごはんをこぼす、片側だけで噛むなど)
・顎や口の周りを頻繁に気にする仕草をする
こうした初期症状は、歯周病や口内炎と見分けがつきにくいため、注意が必要です。
<進行すると現れる症状>
・血の混じったよだれが出る
・目に見えて口の中にできものがある
・ごはんや水の摂取量が減る
・顔の輪郭が左右非対称になる
口腔内腫瘍が進行すると、生活に大きな支障が出てくることがあります。特に食欲の低下や見た目の変化が現れた場合は、すぐに動物病院で診察を受けてください。
<緊急性の高い症状>
・出血が止まらない
・ごはんも水もまったく摂れない
・元気や食欲が急激になくなる
これらの症状が見られた場合は、緊急性が高いため、直ちに動物病院を受診してください。
原因と予防法
口腔内腫瘍の原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のようないくつかのリスク因子が考えられます。
<原因>
・遺伝的な体質(特定の犬種・猫種では発症リスクが高いことがあります)
・加齢(高齢になるほど腫瘍の発生率が高まる傾向にあります)
・慢性的な口腔内の炎症(歯周病などが原因となる場合があります)
・免疫機能の低下や環境要因の影響
たとえば、ゴールデン・レトリーバーやボクサーなどは、比較的口腔内腫瘍が発生しやすい犬種とされています。猫においては、扁平上皮癌と呼ばれる悪性腫瘍の発症が特に多く見られます。
このように、遺伝や加齢といった避けられない要因もありますが、日常生活の工夫によってリスクを軽減したり、早期に異変に気づいたりすることは可能です。そこで、飼い主様に実践していただきたい予防方法をいくつかご紹介します。
<予防方法>
・定期的に歯みがきやデンタルガムなどでお口のケアを行う
・異常がないか定期的にお口の中をチェックする
・口臭やよだれの変化など、普段と違う様子があればすぐに獣医師に相談する
早期に異変に気づくためには、愛犬や愛猫と過ごす日常の中でちょっとしたサインを見逃さないことが重要です。
治療方法と飼い主ができるサポート
口腔内腫瘍の治療は、腫瘍の種類や進行の程度、全身状態などに応じて以下を選択します。
・外科手術:最も一般的な治療方法で、腫瘍を外科的に取り除きます。良性・悪性いずれにも適応されることが多いです。
・放射線治療:外科手術が難しい場合や、手術後の補助療法として行うことがあります。
・化学療法:進行した悪性腫瘍や、全身への転移がある場合などに用いられます。
なお、治療を行う際は腫瘍の状態だけでなく、犬や猫の体力や年齢、生活の質も考慮して慎重に実施します。
このように治療法にはいくつかの選択肢がありますが、実際に治療を進めるうえでは「ご家庭での過ごし方」も大切になります。治療の効果を高め、愛犬や愛猫が少しでも快適に過ごせるようにするために、飼い主様が意識できる以下のようなポイントを確認しておきましょう。
<治療中の生活で気をつけたいこと>
・固いフードは避け、やわらかい食事に変更する
・お口の中を無理に触らないようにする
・痛みやストレスが少なくなるよう、静かで安心できる環境を整える
<術後のケアのポイント>
・食事は獣医師の指導に従ってやわらかいものや流動食にする
・傷口を清潔に保ち、感染を防ぐ
・薬の投与や通院をしっかりと行い、再発防止に努める
飼い主様のサポートが、犬や猫の治療と回復を大きく助けてくれます。少しでも不安に感じることがありましたら、どうぞ遠慮なく獣医師にご相談ください。
Q&A(よくある質問)
Q:口の中のできものは全て悪性ですか?
A:いいえ、すべてが悪性とは限りません。良性の腫瘍も存在し、その中には切除すれば再発しにくいものもあります。ただし、外見だけでは良性か悪性かを見分けることはできないため、必ず獣医師の診察を受けるようにしましょう。
Q:手術をしないで治療することは可能ですか?
A:腫瘍の種類や状態によっては、手術以外の治療(放射線治療や化学療法)を選ぶこともあります。しかし、一般的には外科手術が第一選択となるケースが多いです。どの治療が最適かは、動物病院での検査と診断をもとに判断されます。
Q:口腔内腫瘍は他の臓器に転移しますか?
A:悪性腫瘍の場合、リンパ節や肺などへ転移する可能性があります。特に猫の扁平上皮癌では転移リスクが高いため、定期的な検査と早期治療が重要になります。
まとめ
犬や猫の口腔内腫瘍は、決してまれな病気ではありません。初期の段階では気づきにくいこともありますが、早期に発見して適切な治療を受けることで、愛犬や愛猫の生活の質を大きく守ることができます。
「最近よだれが多い気がする」「口の中に小さなできものを見つけた」というような、些細な変化にも目を向けてあげましょう。そして、少しでも不安がある場合には、迷わず動物病院にご相談ください。
当院では、口腔内腫瘍に関する診察や検査、治療を幅広く行っております。早期発見と的確な治療で、愛犬や愛猫の健やかな毎日をサポートいたします。