犬や猫の皮膚に、触るとコリコリとしたしこりのようなものを見つけて「腫瘍ではないか」と不安に感じたことはありませんか?とくに頭部や首、背中などにできるしこりの正体として「毛包腫瘍(もうほうしゅよう)」という皮膚の腫瘍が知られています。
毛包腫瘍はほとんどの場合で良性であるとされていますが、中には大きくなったり破れたりして炎症を起こすこともあります。そのため、見逃さずに適切な診断と治療を行うことが大切です。
今回は犬や猫に見られる毛包腫瘍について、原因や症状、診断・治療方法などを解説します。
毛包腫瘍とは?
毛包腫瘍とは、皮膚の毛穴(毛包)から発生する腫瘍の総称です。毛包に由来するため皮膚にできることが多く、比較的よく見られる皮膚腫瘍の一つです。多くは良性で、急速に悪化することは少ないですが、経過観察が必要な場合もあります。
また、犬や猫に発生する毛包腫瘍には、以下のような種類があります。
・毛芽腫(もうがしゅ)
・毛包上皮腫(もうほうじょうひしゅ)
・角化棘細胞腫(かくかきょくさいぼうしゅ)
・毛根鞘腫(もうこんしょうしゅ)
・毛母腫(もうぼしゅ)
この中でも特に犬や猫で多く見られるのは「毛芽腫」です。毛芽腫は比較的よく見られる良性腫瘍で、発見される機会も多くなっています。
原因
犬や猫における毛包腫瘍の発生メカニズムは、現在のところ明確には分かっていません。遺伝的な要因や体質、加齢に伴う皮膚の変化などが関与している可能性があると考えられていますが、確定的な原因は特定されていません。
なお、毛包腫瘍の中でも特に多く見られる毛芽腫については、以下のような犬種で発症しやすい傾向が報告されています。
・プードル
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・雑種犬
また、発症年齢としては6歳から9歳頃の中高齢の犬で多く見られます。猫でも中高齢期に見つかることが多く、年齢とともにリスクが高まると考えておいた方が良いでしょう。
症状
毛包腫瘍は皮膚に発生するため、外見や触診によって発見されることが多いです。特に以下のような特徴が見られます。
・頭部、首、背中などにできやすい
・直径1~2cm程度の丸くて硬いしこり
・触れるとコリコリしており、皮膚との境目がはっきりしている
・多くの場合は1か所のみにできるが、まれに複数できることもある
・時間とともに大きくなることがある
・腫瘍が破れ、出血や膿のような内容物が出る場合がある
また、炎症を起こすと犬や猫が患部を気にして舐めたり、引っ掻いたりする様子が見られます。こうした変化がある場合は、悪化を防ぐためにも早めに動物病院を受診することが大切です。
検査の重要性と受診の目安となるサイン
毛包腫瘍は良性であることが多いですが、皮膚にできるしこりには悪性腫瘍や感染症による腫れなど、さまざまな可能性があるため注意が必要です。見た目だけでは判断が難しいこともあるため、正確な診断には検査が不可欠です。
また、皮膚腫瘍に以下のような症状が見られた場合には、自己判断せずに早めに獣医師の診察を受けるようにしましょう。
<受診が必要なサイン>
・しこりが急に大きくなった
・出血や膿が出ている
・犬や猫が患部を頻繁に舐めたり、気にしたりしている
・数が増えてきた、他の場所にもできた
・触ると痛がる、違和感がありそう
診断方法
毛包腫瘍の診断には、まず「細胞診」と呼ばれる検査が行われます。これは注射針を腫瘍に刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する方法です。短時間で行えるため、動物にかかる負担も比較的少ない検査です。
ただし、細胞診だけでは腫瘍の種類を特定できない場合もあります。そのため、確定診断を行うには、腫瘍の一部あるいは全体を外科的に切除して「病理組織検査」を行う必要があります。この検査により、腫瘍の性質や悪性・良性の判断が可能となります。
治療方法
多くの毛包腫瘍は良性であるため、外科手術によって完全に取り除くことで治癒が期待できます。なお、手術は局所麻酔や全身麻酔を用いて行われます。
また、しこりのサイズや犬や猫の健康状態によって異なりますが、小さな良性腫瘍であれば、日帰りでの外科手術が可能なこともあります。ただし、全身麻酔を必要とする場合は、入院や術後の観察が必要となることもあるため、獣医師とよく相談することが大切です。
<経過観察という選択肢>
良性で小さく、炎症や出血がなく、犬や猫が気にしていない場合には、すぐに切除せず経過を観察する選択もあります。ただし、腫瘍が大きくなる傾向が見られた場合や、再発のリスクがあると判断された場合には、早期の切除が推奨されます。
予防法とセルフチェック
毛包腫瘍は残念ながら予防する確実な方法はありません。しかし、早期に発見することで炎症や悪化を防ぎ、治療の選択肢も広がります。
また、日常的に行いたいセルフチェックのポイントは以下の通りです。
・頭部、首、背中を中心に皮膚全体を手で優しく撫でて、しこりや腫れがないか確認する
・定期的にブラッシングをしながら皮膚の状態を観察する
・特定の部位を頻繁に舐めたり掻いたりしていないか注意する
こうしたスキンシップを通じて、小さなしこりにも早めに気づくことができます。少しでも気になる異変を感じた際は、早めの受診をおすすめします。
毛包腫瘍についてよくある質問
Q:毛包腫瘍は放置しても大丈夫ですか?
A:多くは良性ですが、放置することで腫瘍が大きくなったり破裂したりするリスクがあります。できるだけ早めに動物病院を受診し、適切な対応を受けるようにしましょう。
Q:悪性の可能性はありますか?
A:毛包腫瘍の多くは良性ですが、まれに悪性腫瘍のケースもあります。確定診断には病理検査が必要ですので、診断結果を待って慎重に判断することが大切です。
Q:手術後に再発することはありますか?
A:腫瘍を完全に切除できた場合は、再発することは少ないとされています。ただし、体質や年齢によっては新たに別の部位に発生することもあるため、定期的な健康チェックを継続してください。
Q:猫にも毛包腫瘍はできますか?
A:はい、猫にも毛包腫瘍は発生します。犬ほど頻度は高くありませんが、特に中高齢の猫で見つかることがありますので、犬と同様に注意が必要です。
まとめ
毛包腫瘍は、犬や猫によく見られる皮膚の腫瘍の一つであり、ほとんどが良性であるとされています。ただし、放置して大きくなったり、自壊して炎症を起こしたりすることで犬や猫の生活に影響を与えることがあります。
飼い主様が日常的にスキンシップを取りながら、しこりの有無や皮膚の異常を観察することが早期発見に繋がります。そして、少しでも異変に気づいた場合は早めに獣医師の診察を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。
当院では、犬や猫の皮膚腫瘍に関する検査や治療に対応しております。気になるしこりを見つけた際には、どうぞお気軽にご相談ください。
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