夏は飼い主様にとって愛犬とのお出かけやレジャーを楽しめる季節ですが、同時に犬にとっては暑さや虫などの外的要因によって体調を崩しやすい時期でもあります。
特に暑さに弱い犬種では、少しの油断が命に関わることもあるため、正しい知識と備えが必要です。
今回は、愛犬と安全に夏を過ごすための注意点を「お留守番」「レジャー」「健康管理」「虫対策」などの視点からご紹介します。
夏の留守番:暑い日のお留守番対策
暑い日に犬をお留守番させる際は、以下のような熱中症対策を万全にしておくことが大切です。
<室温管理>
エアコンは常時稼働させ、室温が23℃前後になるように調整しましょう。なお、直射日光が室内に差し込むと、エアコンを使用していても室温が上昇してしまいます。そのため、レースカーテンやすだれを活用し、日光が直接差し込まないように工夫しましょう。
<水分補給>
長時間の留守番では水分の確保も重要です。水飲み場を複数設置したり、自動給水器を活用したりして、いつでも水を飲める環境を整えてください。
<見守り対策>
最近では、ペットカメラなどの機器を活用して、留守中の犬の様子をリアルタイムで見守る飼い主様も増えています。声かけ機能があるカメラを活用することで、しつけにも役立てられる場合がありますので、事前にトレーニングをしておくとさらに安心です。
夏のレジャーと犬:一緒に楽しむ季節のアクティビティ
夏には、愛犬とアクティビティを一緒に楽しむという方も多いと思います。アクティビティの種類によって注意点が異なるため、しっかりと以下のような対策をしてから出かけるようにしましょう。
<海のレジャーの場合>
海に出かける際はこまめに休憩を取り、いつも以上にしっかりと水分補給を行いましょう。また、砂が耳や目に入ったり、海水を飲んで食塩中毒を起こしたりするケースもあるため、こまめに体調を観察しましょう。
<山のレジャーの場合>
山は緑が多いため、ノミやマダニが潜んでいます。そのため、事前にしっかりと駆虫予防を行いましょう。
<屋外での食事(BBQなど)の場合>
BBQなど、屋外での食事は誤飲事故を起こすリスクが高まります。そのため、ゴミは犬の口が届かない場所で管理したり、蓋ができるケースに入れたりするようにしましょう。また、火を使う場合には火傷対策も忘れてはいけません。火を使っている間はクレートに入れるなどして、火に近づけないように工夫しましょう。
夏特有の健康管理とケア
犬は人間と同じように、汗をかいて体温を調整することができません。特に短頭種(フレンチ・ブルドッグ、シー・ズーなど)や寒冷地原産の犬種(シベリアン・ハスキー、サモエドなど)は暑さに非常に弱く、熱中症のリスクが高まります。
重度の熱中症は命に関わる危険性があるため、夏場のお出かけ時や留守番時には十分な注意が必要です。また、散歩の時間帯を早朝や夜にずらすことで気分転換になったり、屋内の涼しい環境で安心して過ごしたりするといった工夫も大切です。
熱中症の予防と対策
以下のような症状が見られる場合は、熱中症の初期サインである可能性があります。
・口を開けて浅く速い呼吸をしている
・体が熱い
・ヨダレを垂らしている
・舌の色がいつもより赤紫色をしている(チアノーゼ)
さらに進行すると、嘔吐や下痢、ふらつき、震えなどが見られ、最悪の場合は意識がなくなり命を落とすこともあります。そのため、熱中症が疑われる場合は、すぐに涼しい場所へ移動し、保冷剤などで脇の下や鼠径部、首元を冷やしてください。
また、全身に水をかけて扇風機などで風を送ることも有効です。意識がある場合は水を飲ませてください。また、これらはあくまでも応急処置であるため、どのような場合でも早急に動物病院を受診しましょう。
虫・寄生虫の予防と対策
夏の敵は熱中症だけでなく、 虫や寄生虫にも注意が必要です。
<ノミ・マダニの予防>
ノミはアレルギー性皮膚炎や条虫症の原因になり、マダニはバベシア症やSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの感染症を媒介します。いずれも命に関わることがあり、人にも感染するリスクがあるため、夏の間は特に予防が必要です。
<蚊の対策とフィラリア症>
蚊はフィラリア症を媒介します。この病気は最終的に心臓や肺の血管に寄生し、命に関わる重篤な症状を引き起こすことがあります。ただし、フィラリア症は適切な予防薬の投与によって防ぐことができます。
なお、当院があるつくば市における予防期間は5月から12月までです。毎年、予防を開始する前には必ず血液検査が必要であるため、まだの飼い主様は早めのご来院をお願いいたします。
よくある質問
Q:夏のアスファルトは肉球に影響する?
A:はい、夏場のアスファルトは60℃を超えることもあり、肉球をやけどしてしまう危険があります。そのため、散歩は早朝や夜の涼しい時間に行い、日中の外出時には抱っこするなどして、アスファルトの上を歩かせないように注意しましょう。
Q:なぜ犬はセミを食べようとするの?
A:犬は本能的に動くものに反応してしまう習性があります。セミのような昆虫に対しても興味を示し、口に入れて確かめようとすることがあります。食べた際に「おいしい」と感じてしまうと、繰り返し食べようとすることもあります。
Q:犬がセミを食べても大丈夫?危険性は?
A:基本的にセミを食べても大きな問題は起きませんが、犬にとっては消化しにくいため、下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす可能性があります。予防のためにも、セミは食べさせないようにしてください。
まとめ
夏は愛犬との思い出をたくさん作れる季節である一方、熱中症や虫による感染症、誤飲などのリスクも高まります。そのため、事前の準備と正しい知識が欠かせません。気温や環境に配慮しながら、愛犬の体調を第一に考えて、無理のない範囲で夏を楽しみましょう。
当院では、夏に関する健康相談や予防のご相談も承っております。気になることがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。飼い主様と大切なご家族が、安心して夏を過ごせるよう全力でサポートいたします。
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