犬のトリミングは健康管理の一環|医学的効果と頻度の目安|茨城県つくば市の『さくま動物病院』

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2025/05/23

わんちゃん,スタッフブログ

犬のトリミングは健康管理の一環|医学的効果と頻度の目安

「最近、愛犬の毛が伸びてきたけど、トリミングってそこまで急がなくてもいいのでは?」と思ったことはありませんか?

実は、犬のトリミングは見た目を整えるだけの美容目的ではなく、健康を守るうえでもとても重要なケアのひとつです。毛が伸びすぎると、皮膚にトラブルが起きやすくなったり、病気の兆候を被毛に隠れて見逃してしまったりすることもあります。

そのため、定期的に適切なトリミングを行うことで皮膚の状態が整い、かゆみや炎症の予防にもつながります。結果として、犬が快適に過ごせるようになり、QOL(生活の質)が大きく向上することもあるのです。

今回は、犬のトリミングが持つ医学的な意義や犬種ごとの必要性、さらに季節ごとの注意点や自宅でのケアに潜むリスクまで、獣医師の視点から詳しく解説します。

犬のトリミングが持つ医学的意義とは?

トリミングは、ただ毛を短く整えるだけの作業ではありません。犬の皮膚はとてもデリケートで、皮脂やフケ、被毛に付着した汚れがたまると、細菌や真菌が繁殖しやすくなり、皮膚トラブルの原因となってしまいます

だからこそ、定期的にトリミングを行い、皮膚を清潔な状態に保つことが大切です。かゆみや炎症を防ぐだけでなく、健康的で快適な生活を送るためにも、トリミングは欠かせないケアのひとつです。

<トリミング不足がもたらす健康リスク>
トリミングを怠ることで、以下のような健康トラブルが起こる可能性があります。

■皮膚病
伸びすぎた被毛によって皮膚に酸素が届きにくくなり、湿気や熱がこもることで皮膚病が発生しやすくなります。

■寄生虫
もつれた毛の中にノミやダニが潜みやすくなり、皮膚炎や感染症などを引き起こす原因になります。


■痛み・炎症
毛玉が皮膚を強く引っ張ることで、痛みや炎症を引き起こすことがあります。
また、耳の中が毛で覆われて通気性が悪くなると、外耳炎の原因にもなるため、特に耳の中に毛が生える犬種では注意が必要です。

<トリミングの重要性>
特に動物病院に併設されているトリミング施設では、見た目を整えるだけでなく、健康管理の一環としても大きな役割を担っています。実際に、定期的にトリミングを受けている犬では、皮膚の腫瘤や小さな傷などが早期に発見されることも少なくありません。

トリマーは、獣医師の指導のもとで全身を丁寧にチェックしながら作業を行います。飼い主様が気づきにくい部分の赤みやしこり、脱毛、かさぶたなども、トリミング中の触診で見つかるケースがあります。

さらに、異常が見つかった際には、すぐに獣医師が診察・対応できる体制が整っているのも、病院併設ならではの安心ポイントです。美容と健康の両面からサポートできるのが、動物病院併設のトリミングの大きな強みといえるでしょう。

犬種別トリミングの必要性

犬の被毛のタイプは犬種によって異なり、以下のようにそれぞれに適したケアを行いましょう。

<長毛種(プードル、ヨークシャーテリアなど)>
このタイプの犬種は、人間の髪の毛と同様に被毛が伸び続けるため、定期的なカットが欠かせません。毛が長く厚くなりすぎると体温の放散がうまくいかず、特に夏場は熱がこもりやすくなります。

また、毛玉ができやすく、ブラッシングの際に皮膚が強く引っ張られてしまい、炎症や血行不良を引き起こす原因になります。場合によっては、痛みを伴ったり、皮膚が傷ついてしまったりすることもあります。

定期的に適切なブラッシングやカットを行うことで、見た目の快適さだけでなく、体温調節の補助にもつながります。

<ダブルコートの犬種(柴犬、シベリアン・ハスキーなど)>
ダブルコートとは、硬めの上毛と柔らかい下毛(アンダーコート)の二重構造を持つ被毛のことです。これらの犬種は季節の変わり目(特に春と秋)に大量の抜け毛が発生します。抜け毛が溜まると通気性が悪くなり、皮膚が蒸れて炎症を起こしやすくなります。

アンダーコートをしっかり取り除く「アンダーコートブロー」を定期的に行うことで、皮膚の環境を清潔に保ち、皮膚病の予防にもつながります。

<短毛種の犬(ラブラドール・レトリーバー、ビーグルなど)>
短毛種でも、皮膚の健康維持のために定期的なケアは欠かせません。毛が短いぶん、皮脂や汚れが皮膚に直接残りやすく、フケや体臭の原因となります。特に皮脂の分泌が多い犬種では、臭いの発生や皮膚のベタつきが気になることもあります。

定期的にブラッシングやシャンプーを行うことで、皮脂のバランスを整え、皮膚のバリア機能を保つことができます。

トリミング頻度と季節要因:獣医学的観点

犬種によって必要なトリミングの頻度は異なります。以下を目安に、犬の個性や生活環境を考慮しながら調整することが大切です。

長毛種の場合:3〜4週間に1回
ダブルコートの犬種の場合:月1回(特に換毛期の春・秋は重点的に行う)
短毛種の場合:1〜2か月に1回

この頻度はあくまで目安です。アレルギー体質や皮膚疾患がある場合は、獣医師と相談しながら、個々の状態に応じたペースで行うことが望ましいです。

季節に応じたトリミング調整の健康効果

気温や湿度の変化が大きい季節は、犬の皮膚トラブルが起こりやすい時期でもあります。以下のように季節ごとに適切なトリミングで皮膚環境を整えることが、犬の健康を守るためにとても大切です。

<夏の場合>
夏場は高温多湿の影響で、皮膚が蒸れて雑菌が繁殖しやすくなります。また、毛が厚く重なっていると熱が体内にこもりやすくなり、熱中症の原因にもなります。そのため、適度なカットやこまめなシャンプー、ドライ処置を徹底しましょう。


<冬の場合>
冬は乾燥により皮膚がかさつきやすく、被毛を短くしすぎると体温が下がりすぎるリスクもあります。特にシニア犬や寒がりな犬は注意が必要です。この時期は被毛の長さをある程度残しつつ、保湿効果のあるシャンプーやスキンケア剤を取り入れることで、皮膚のバリア機能を保つことができます。

獣医師が警告するセルフトリミングの注意点

ご自宅でトリミングを行うことは、経済的で愛犬とのコミュニケーションにも繋がります。しかし、やり方を間違えると大きなトラブルを招くことがあります。特にデリケートな部位のケアや、道具の扱いには十分な注意が必要です。

<耳・目・肛門周りのセルフケアの危険性>
耳掃除や肛門腺しぼりなどは、一見簡単そうに見えても、内部を傷つけてしまったり感染症を引き起こしたりする恐れがあります。特に耳の奥まで綿棒を入れてしまうと、外耳道炎を悪化させてしまうことがあります。

また、肛門腺は力の入れ方を誤ると破裂することがあり、病院での処置が必要になることもあります。これらのケアは専門的な技術が求められるため、無理をせずプロに任せることをおすすめします。

<爪切りと足裏のケアにおける注意点>
犬の爪には血管が通っており、深く切りすぎると強い出血や痛みを伴います。さらに、足裏の毛が伸びすぎると床で滑りやすくなり、転倒や関節への負担が増してしまいます。

特に高齢の犬や関節に不安がある犬にとって、足裏のケアはけがの予防に直結します。爪や足裏の状態は、日頃からしっかり観察しておきましょう。

まとめ

犬のトリミングは、見た目を整えるためのものと思われがちですが、実際には皮膚や被毛の健康を守るための大切な医療的ケアです。犬種や季節に応じた適切な頻度と方法でトリミングを行うことで、皮膚病や熱中症、乾燥トラブルを防ぐことができ、愛犬の快適な暮らしをサポートできます。

また、ご自宅でのケアには限界があり、誤った方法はかえって健康を損なうリスクもあるため、必要に応じて専門家の力を借りることも大切です。飼い主様が正しい知識を持ち、愛犬に合ったトリミング習慣を身につけることが、健康寿命の延伸につながります。


茨城県つくば市・牛久市・土浦市を中心に動物診療を行う

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