「興奮するとガーガーと咳をする」「夜中に咳き込むことが増えた」。愛犬にこうした様子があると、喉の問題なのか、心臓の病気なのかと心配になりますよね。
犬の咳には、気管虚脱や気管支炎などの気道の病気のほか、心臓病が関係することもあります。ただし、咳の音や出る時間帯だけで原因を見分けることはできません。
当院では、咳で来院した犬について、まず「咳の音・心音・呼吸音・頻度」の4点を確認します。
今回は、ご家庭で観察できるポイントと、診察で原因を絞り込む流れを解説します。
ご家庭では咳の音・タイミング・頻度を確認しましょう
診察室では咳が出ないこともあるため、ご家庭での様子が大切な手がかりになります。聞こえた音や、そのときの様子を獣医師に伝えてください。
<どのような音がするか>
咳の音は、例えば次のように表現できます。
・「コンコン」「カッカッ」と乾いた音がする
・「ガーガー」と響くような音がする
・「ゴホゴホ」と何かが絡むような音がする
・咳の最後に「オエッ」と吐くようなしぐさをする
咳の聞こえ方には個人差があります。言葉にしにくい場合は、音が入るように動画を撮影すると、咳の特徴を伝えやすくなります。
<いつ、どのくらい出るか>
音とあわせて、咳が出る場面や頻度も記録しましょう。
・来客時など、興奮したときに出る
・散歩中や首輪が引っ張られたときに出る
・水を飲んだあとや、起き上がったときに出る
・夜間や明け方、眠っている間にも出る
・1日に何度出るか、1回の咳き込みがどのくらい続くか
・以前より回数が増えているか
「昨夜、寝ている間に3回咳き込み、1回につき10秒ほど続いた」など、具体的な記録が診察の参考になります。また、撮影のために首を押したり、走らせたりして咳を誘発することは避けてください。
気管虚脱・気管支炎ではどのような咳が出る?
気道は、空気が肺へ出入りする通り道です。気管が狭くなったり、気管支に炎症が起きたりすると、咳が出ることがあります。
<気管虚脱>
気管虚脱は、気管を支える軟骨などが弱くなり、気管がつぶれて空気の通り道が狭くなる病気です。小型犬で多く見られ、「ガーガー」とガチョウの鳴き声のように響く、乾いた咳が特徴のひとつです。
興奮・運動・暑さや、首への圧迫で咳が強くなることがあります。ただし、こうした咳がすべて気管虚脱によるものとは限りません。
<気管支炎>
気管支炎は、気管から肺へ枝分かれした気管支に炎症が起きる病気です。感染や刺激物などが関係する場合もあれば、慢性的な炎症が続く場合もあります。
「コンコン」「ゴホゴホ」と繰り返し咳き込み、最後に「オエッ」とえずくこともあります。休んだあとや動き始めに目立つ場合がありますが、乾いた咳か、何かが絡むような咳かだけでは診断できません。咳の続いている期間や、ほかの犬との接触歴なども確認します。
心臓病が関係する咳との違いは?
犬では、僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病に伴って咳が見られることがあります。大きくなった心臓による気管支への圧迫や、心不全に伴う肺水腫などが関係します。
心臓病でも乾いた咳や湿ったような咳が出ることがあり、気道の病気と音が重なります。「夜に咳が出るから心臓病」「ガーガーという音だから気管虚脱」とは判断できません。心臓病と気道の病気を併発している犬もいます。
そこで、咳に加えて、次のような変化がないか確認します。
・眠っているときの呼吸が普段より速い
・散歩中に立ち止まる、疲れやすくなる
・食欲や元気が低下する
・横になりにくそうにする
これらは心臓以外の病気でも起こりますが、受診時に伝えたい情報です。また、眠っているときの胸やおなかの「上がって下がる」動きを1回として、1分間の呼吸数を記録しておくと、普段との違いを確認できます。
病院では心音・呼吸音を確認し、検査で原因を絞り込む
ご家庭で記録する咳の音や頻度に対し、心音・呼吸音は獣医師が聴診で確認する項目です。当院では、動画や記録と診察で得られた情報を照らし合わせ、原因を順に検討します。
<まず、咳の経過と聴診所見を確認>
咳が始まった時期、音、頻度、出る場面を伺い、心音では心雑音やリズムの異常、呼吸音では空気の通り方や異常な音の有無を確認します。
心雑音が聞こえても、それだけで咳の原因が心臓病とは決まりません。また、聴診で目立った異常がなくても、気道の病気を否定できるとは限りません。
<必要な検査を組み合わせる>
聴診などの結果を踏まえ、レントゲン検査で気管の狭まりの有無、心臓の大きさ、肺の状態を確認します。心臓病が疑われる場合は、心臓超音波検査などを検討します。
気管虚脱は呼吸に伴って気管の狭まり方が変わるため、1回のレントゲン撮影では捉えにくい場合もあります。咳が続く場合は、追加の検査が必要になることがあります。
このように、咳の音・頻度と心音・呼吸音を入口に、検査結果をあわせて判断します。呼吸が苦しい場合は、詳しい検査よりも酸素投与などの処置を優先します。
咳が続くときの受診目安
咳を繰り返す、回数が増える、眠りが妨げられる場合は、元気や食欲があっても早めにご相談ください。安静時の呼吸が普段より速い、食欲や元気も落ちている場合は、当日中に動物病院へ連絡しましょう。
特に、次のような症状がある場合は、緊急受診が必要です。
・胸やおなかを大きく動かし、苦しそうに呼吸する
・涼しい場所で安静にしていても、口を開けて呼吸する
・舌や歯ぐきが青色・紫色に見える
・倒れる、失神する、立ち上がれない
この場合は動画の撮影を優先せず、すぐに動物病院へ連絡してください。移動時は無理に歩かせず、できるだけ興奮させないようにしましょう。
まとめ
犬の咳は、気管虚脱・気管支炎・心臓病など、さまざまな原因で起こります。音や時間帯だけで見分けようとせず、ご家庭での観察と、病院での聴診・検査を組み合わせることが大切です。
咳の音や出る場面、頻度を記録し、可能であれば動画もお持ちください。うまく説明できなくても構いません。当院では、飼い主様が気づいた変化を伺いながら、愛犬の咳の原因と必要な対応を検討します。
茨城県つくば市・牛久市・土浦市を中心に動物診療を行う
さくま動物病院






