白内障は人間にも身近な疾患で、高齢になると目が白くなるというイメージがあると思います。しかし犬と人間が起こす白内障には、多くの違いがあります。
今回は犬の白内障について、原因や診断方法、治療法などをご紹介します。
犬の白内障とは?基礎知識と原因
白内障とは水晶体(目のレンズの役割をしている部分)が混濁している状態で、その程度と範囲によって初発期、未熟期、成熟期、過熟期に分類されます。
白内障を起こす原因は以下が考えられます。
<先天性>
DNAの突然変異や妊娠中の母犬の感染症などに起こります。
<遺伝性>
若齢での発症が多く、トイ・プードルやミニチュア・シュナウザー、アメリカンコッカースパニエルなどで報告があります。
<代謝性>
特に糖尿病の犬に多く見られます。高血糖により水晶体内のグルコース濃度が低下し、代謝しきれないグルコースがソルビトールとなって蓄積します。
<加齢性>
加齢が原因で白内障を起こします。これを「加齢性白内障」とよびます。
<外傷性>
水晶体に外的負荷(圧迫など)がかかったり、喧嘩による水晶体穿孔が起きたりすることで発生します。
ほかにも中毒性白内障や栄養性白内障、放射線性白内障などがあります。
また、犬は猫よりも白内障の罹患率が高いです。猫は酵素活性による影響で糖尿病性白内障を発症しにくいことや、加齢性白内障での水晶体混濁度が低く、臨床症状も現れないため白内障と診断されにくいです。
犬の白内障による進行段階別の症状
<初期症状>
水晶体の10〜15%ほどが混濁し、視覚があります。犬の行動に変化があまり見られず、濁りも軽度なため気づきにくいです。
<中期症状>
混濁が広がり、白内障と視認しやすくなります。まだ視覚はありますが、物の動きを追えなくなったり、暗い所で恐る恐る歩いたりと行動に変化が表れます。
<末期症状>
混濁が水晶体全体に広がり、視覚がほぼ、もしくは全くない状態です。見えていてもすりガラス越しに見ているような状態で、物にぶつかったり動きが鈍くなったりします。
白内障の診断方法
以下のさまざまな検査により、総合的に診断します。
<問診>
犬の基本情報(犬種や年齢、既往歴など)を確認し、普段の様子や混濁に気がついた時期などを聴取します。
<視覚検査>
威嚇瞬目反応、眩目反射、対光反射などを確認し、視力の程度を調べます。
<眼圧検査>
合併症の有無や、白内障の原因となるような先行疾患がないかを確認します。
<細隙灯検査>
角膜、前房(角膜と水晶体の間)水晶体内部の様子を観察します。
<眼底検査>
網膜や視神経乳頭の状態を観察します。
白内障の診断には、緑内障や網膜剥離など合併症の有無や核硬化症(同様に目が白く見える病気)との鑑別が必要なため、水晶体だけでなく目全体の状態を把握する必要があります。
進行した白内障は手術が適応かどうかを判断するために、網膜電位図検査を行う必要があります。
犬の白内障の治療法と対処法
白内障の内科的治療は、点眼がメインとなります。点眼は進行の抑制と合併症の予防効果があります。またアントシアニンやオメガ脂肪酸などが含まれているサプリメントを補助的に使用することもあります。
外科的治療は、超音波水晶体乳化吸引術や眼内レンズ挿入術などがあります。当院では、外科が適応となる場合は専門医や大学病院へのご紹介を行っております。
白内障の犬との暮らし方
中期症状以降の犬は視覚が落ちた状態で生活しているため、サポートや配慮が必要です。犬は家具の配置や間取りの記憶を頼りに歩いていることが多いため、模様替えをしたり普段と違う場所に物を置いたりしないようにしましょう。
また、落下の危険があるため、段差のあるところは入れないようにしてください。家具や柱の角にはクッションをつけると良いでしょう。
白内障を起こしている犬は、目が見えない不安から臆病になったり攻撃的になったりすることがあるため、近づくときは声をかけ、急に触らないようにしましょう。
犬の白内障対策
前述したように白内障の初発期は、水晶体の濁りに気づきにくいです。
視力が鮮明なうちに白内障を発見し、治療を開始することで視覚の喪失を遅らせることができます。そのため、定期的な健康診断を受診し、目の状態を獣医師に確認してもらうことが大切です。
長時間紫外線を浴びない、抗酸化作用のある栄養素(ビタミン類、アントシアニン、オメガ脂肪酸など)を積極的にとることもお勧めです。
まとめ
犬の白内障は診察をすることが多く、誰でもなりうる病気です。
白内障を起こすと、目が白くなるだけでなく、さまざまな合併症を引き起こすため、早期発見と早期治療が大切です。
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