白内障とは、本来は透明な「水晶体」と呼ばれる眼の中にある部位が、何らかの原因によって濁ってしまった状態のことを指します。
人では高齢になると発症しやすくなる病気と言われていますが、犬と猫では年齢が若くても発症することがあります。
今回は、犬と猫の白内障の原因や治療法などについて解説していきます。
白内障の原因
白内障は、以下のような原因によって引き起こされます。
・年齢によるもの
人と同じく、高齢になると発症しやすいとされています。
ただし犬と比べると猫ではそれほど多くはありません。
・遺伝的なもの
犬ではチワワやトイ・プードル、シーズー、柴犬、ラブラドール・レトリバーなどの犬種で多く、猫ではペルシャやシャムなどの猫種で多いと言われています。
・糖尿病
糖尿病の犬では糖代謝に関連して引き起こされる白内障が多く見られます。
一方、猫は糖代謝のメカニズムが犬と異なるため、糖尿病による白内障は少ないと言われています。
・外傷
猫に多く見られる原因は外傷によるものです。
猫同士のけんかなどで眼の中の水晶体が傷つき、炎症が起こることで白内障が引き起こされます。
白内障の症状
白内障になると、主に以下のような症状が見られるようになります。
・眼が白く見える
・よく物などにぶつかる
・動きが鈍くなる
・視線が合いにくくなる など
犬や猫では聴覚や嗅覚などが優れているため、白内障によって視界が悪くなっていても一見普通に生活できている場合も多く、初期段階で気付くことは難しいと言えます。
少しでも早く白内障に気付くためには、日頃から愛犬・愛猫の様子や眼の状態をよく観察することが重要です。
診察方法
白内障かどうかを判断するためには、スリットランプと呼ばれる専門的な機器で眼に光を当て、眼の内部を確認する検査を行います。
治療法
白内障の治療法には、外科治療と内科治療があります。
・外科治療
一度濁ってしまった水晶体は、残念ながら元の透明な状態には戻せません。
再び視力を戻すためには、濁った水晶体を摘出し、人工のレンズを入れる外科手術を行います。
・内科治療
外科治療を望まない場合や手術を行うことが難しい場合には、白内障の進行を遅らせたり、合併症の予防や治療のために点眼薬やサプリメントを使った内科治療を行います。
白内障の予防方法
白内障を完全に予防することは難しいですが、犬では白内障の原因となる糖尿病にならないよう食事や体重の管理をしっかり行うことや、猫では外で他の猫とけんかをすることがないように室内飼育を徹底するなど、発症の機会やリスクを低くすることは可能です。
大切な家族の生活環境を整えて、できるだけ白内障の発症リスクを下げられるよう努めましょう。
まとめ
白内障は、進行してしまうとぶどう膜炎などの合併症が起き、重度になると失明してしまうこともあるため、早期の発見と治療が大切です。
普段からペットとの触れ合いの中で眼の様子などもチェックし、何かいつもと違うことがあれば獣医師に相談するようにしましょう。
茨城県つくば市を中心に犬・猫の診療を行う
さくま動物病院
〈参考文献〉
・余戸拓也監修 「伴侶動物の眼科診療」 緑書房 2019
・辻本元ら編集 「犬と猫の治療ガイド2015 私はこうしている」 2015