犬や猫の手作りご飯|栄養バランスと注意点を獣医師が解説|茨城県つくば市の『さくま動物病院』

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2025/09/16

わんちゃん,猫ちゃん,スタッフブログ

犬や猫の手作りご飯|栄養バランスと注意点を獣医師が解説

愛犬や愛猫に「手作りのご飯を作ってあげたいけれど、本当にこれで良いのか不安」と感じたことはありませんか?

最近ではSNSやテレビなどで、犬や猫の手作りご飯が話題に上ることも多く、愛情を込めてご飯を作ってあげたいと考える飼い主様が増えています。一方で、「栄養バランスは大丈夫?」「市販フードより健康に良いのだろうか?」といった疑問を持たれることも少なくありません。

そこで今回は犬や猫の手作りご飯について、栄養面での注意点や向いているケースなどを獣医師の視点からわかりやすくご紹介します。

手作りご飯はいつ必要?適切な判断基準

手作りご飯が本当に必要とされる場面は、実はそれほど多くはありません。主に以下のような状況で推奨されます。

<病気で特別な食事管理が必要な場合>

たとえば慢性腎臓病や消化器疾患、食物アレルギーなどを持つ犬や猫では、療法食がどうしても受け付けられず、食べられる市販のフードが見つからないという状況が起こることがあります。こうしたケースでは、獣医師や動物栄養士の指導のもとで、個別に手作りのレシピを組み立てていく必要があります。

<ご飯をまったく食べてくれない場合>

高齢や病気により、ご飯をまったく食べてくれないといった状況では、嗜好性の高い柔らかい手作り食を一時的に取り入れることが選択肢となることもあります。

ただし、健康な犬や猫の日常的な食事に関しては、市販の総合栄養食フードが最も栄養バランスに優れており、安全性や利便性の面でもおすすめです。市販フードは科学的に計算された栄養配分に基づいて製造されており、ご家庭で同じレベルの栄養バランスを実現することは非常に難しいのが現実です。

とはいえ、「自分の手で食事を用意したい」「一緒に食事の時間を楽しみたい」といった飼い主様の愛情やお気持ちもあるでしょう。大切なのは「手作りが良い」「市販が悪い」といった二元的な判断ではなく、それぞれのメリットとリスクを正しく理解したうえで、目的や状況に応じて適切に使い分けることです。

手作りご飯の栄養バランスの難しさと現実

手作りご飯を取り入れる際に、最も注意が必要なのが「栄養バランスの維持」です。実際には、必要なビタミンやミネラルの摂取量、タンパク質・脂質・炭水化物の比率などを細かく調整しなければなりません。さらに、犬と猫の間でも栄養要求量は異なり、年齢や体重、健康状態によっても必要な栄養素は変わってきます。

特に不足しやすい栄養素としては、以下のものが挙げられます。

・カルシウム
・亜鉛
・タウリン(特に猫にとって必須)
・各種ビタミン

反対に、ナトリウムや脂質などは過剰摂取になりやすく、それにより高血圧や肥満といった健康リスクが高まることもあります。

また、人間の食事を作るついでに犬や猫に与えたり、見た目や食いつきの良さだけで献立を決めたりすると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、責任をもって食事を準備することが、犬や猫の健康を守るための第一歩となります。

手作りご飯と健康問題の関係

手作りご飯には、特定の食材を避けることでアレルギーの管理がしやすくなるという利点があります。市販フードでは対応が難しい原材料の制限も、手作りなら比較的自由に調整することが可能です。

しかしその一方で、栄養バランスが不適切な手作り食を続けることにより、以下のような健康トラブルが起こるリスクもあります。

・被毛のツヤや皮膚の状態が悪化する
・軟便・下痢・血便などの消化器症状が現れる
・食欲の変動や急激な体重の増減

これらの症状は、栄養素の過不足や消化吸収への影響を示している可能性があるため、見逃さずに日々の変化を観察することが重要です。特に手作りご飯に切り替えた直後は、こうしたサインに敏感になり、少しでも異変があれば獣医師に相談するようにしましょう。

栄養バランスの取れた手作りご飯のコツと危険な食材

どうしても手作りご飯を取り入れたいと考える場合には、最低限、以下の栄養配分を意識して献立を組み立てるようにしましょう。

・肉や魚などの動物性タンパク質:全体の約50%
・野菜や海藻類などの食物繊維源:全体の約25%
・炭水化物(ご飯やイモ類など):全体の約25%

特に猫は肉食傾向が強いため、より高い割合で動物性タンパク質を含ませることが望ましいです。

また、以下のような食材は犬や猫にとって有害であり、絶対に与えてはいけません。

◆ネギ類(玉ねぎ、ニラ、ネギなど)
赤血球を壊し、貧血や中毒の原因になります。

◆チョコレート・ココア
カカオに含まれる成分が中毒症状を引き起こし、命に関わる場合があります。

◆ぶどう・レーズン
腎不全を引き起こすリスクがあり、少量でも危険です。

こうした食材は、うっかり混入してしまうこともあるため、十分に注意してください。


そして手作りご飯を与えるうえで最も大切なのは、「必ず獣医師や動物栄養士に相談すること」です。自己流での手作りご飯では、知らず知らずのうちに健康を損なうリスクが高まります。そのため、体調が変化していないかを定期的にチェックし、必要に応じて献立を見直すことも重要です。

Q&A(よくある質問)

Q:手作りご飯と市販フードはどちらが良いですか?
A:どちらが絶対に良い、悪いということはありません。基本的には、市販の総合栄養食が栄養バランスや利便性に優れており、日常的な食事として推奨されます。ただし、特別な事情に応じて、手作りご飯を上手に取り入れるのは良い選択と言えます。

Q:手作りご飯だけで栄養は足りますか?
A:足りないことが多いです。すべての必要な栄養素を自己判断で正確に補うのは難しく、サプリメントなどの追加や獣医師の監修が必要になります。

Q:アレルギーがある場合は手作りご飯が良いですか?
A:特定の食材を避ける必要がある場合には、手作りご飯が効果的なこともあります。ただし、この場合も獣医師の指導を受けながら、栄養バランスを崩さないように注意が必要です。

まとめ

手作りご飯は、飼い主様の深い愛情を直接伝えることができる素敵な選択肢です。しかし、犬や猫の健康を守るためには、正確な栄養管理と獣医師のアドバイスが欠かせません。「体に良さそう」「食べてくれるから安心」といった感覚だけでは、思わぬ健康トラブルを引き起こす可能性があります。

そのため、手作りご飯に興味を持たれた際には、ぜひ一度動物病院にご相談ください。当院では、犬や猫の健康状態に応じた栄養管理のアドバイスを行っております。大切なご家族が、元気で長く暮らせるよう、私たちが全力でサポートいたします。


茨城県つくば市・牛久市・土浦市を中心に動物診療を行う

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