犬で多く見られる悪性腫瘍に、血管肉腫があります。血管肉腫とは、血管内皮細胞が腫瘍化してしまう病気で、主に脾臓や心臓、肝臓、皮膚に発生しますが、転移がよく見られることもあり、体のどの部位にでも発生する可能性があります。
今回は犬の血管肉腫について、原因や症状、治療方法などを解説していきます。
原因
血管肉腫の原因はいまだ解明されていません。
ただし、皮膚や皮下組織での発生のリスク要因としては放射線や紫外線の曝露、外傷などが関連していると考えられています。
また、発症は8歳以上の高齢犬や、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーなどの大型犬種で多く見られる傾向があります。
症状
血管肉腫では、発生部位によって現れる症状が異なります。
脾臓や肝臓に発生した場合には、「元気がない」「食欲不振」「体重減少」「貧血」「ふらつく」「腹部が膨らむ」などの症状が見られ、心臓に発生した場合には「元気、食欲の低下」「咳が出る」「疲れやすくなる」などの症状が見られます。
また、皮膚や皮下組織に発生した場合には皮膚にしこりができます。
このように血管肉腫では幅広い症状が見られますが、初期にはこれといった症状が現れないことも多くあるため、異変が見られた時には病気がかなり進行してしまっていることも少なくありません。
診断方法
血管肉腫では、症状や発生部位によって、次のような検査を組み合わせて診断します。
・血液検査、血液凝固検査
・X線検査
・超音波検査
・心電図検査
・病理組織学的検査
・CT検査、MRI検査
治療方法
血管肉腫の治療では、主に「外科的治療」と「抗がん剤治療」が行われます。
<外科的治療>
手術によって腫瘍を摘出します。ただし、手術で腫瘍を切除しても余命は1年ほどであることが多いため、外科的治療は症状の緩和や病気の進行を遅らせることを目的に行われます。
<抗がん剤治療>
外科的治療と併せて抗がん剤を投与します。
予防法やご家庭での注意点
血管肉腫の原因は不明であるため、残念ながら発生を予防する方法はありません。
病気の早期発見と治療のためにも、定期的な健康診断を受けることに加えて、日常生活の中で愛犬の様子に変わりがないかをよく観察することが大切です。特に高齢犬や好発犬種である場合には日頃から注意し、もしも何か気になる様子があればすぐに獣医師に相談しましょう。
まとめ
血管肉腫は高齢の犬で多く見られる悪性腫瘍であり、転移しやすく、さらには効果的な治療方法がないため、早期に発見しできる限り病気の進行を遅らせることが重要となります。
健康診断は必ず年に1回、7歳以上になったら半年に1回は受けるようにし、もし愛犬にいつもと違う様子が見られた場合にはそのままにせず、すぐに動物病院を受診しましょう。
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