犬がお腹を膨らませ苦しそう…知っておくべき危険信号|胃拡張・胃捻転とは|茨城県つくば市の『さくま動物病院』

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2025/07/02

わんちゃん,スタッフブログ

犬がお腹を膨らませ苦しそう…知っておくべき危険信号|胃拡張・胃捻転とは

「突然、愛犬のお腹が風船のように膨らんで、苦しそうにしている」そんな様子を見て不安になった経験はありませんか?このような症状は「胃拡張」や「胃捻転」という病気のサインかもしれません。

この病気は短時間で急激に進行し、適切な処置が遅れると命に関わる可能性があります。特に特定の大型犬種は発症リスクが高いため、飼い主様の早期の気づきが愛犬の命を守る鍵となります。

今回は犬の胃拡張や胃捻転について、症状や治療方法、予防方法などを解説します。

犬の胃拡張・胃捻転とは?

「胃拡張」とは胃の中にガスや食べ物、液体が異常にたまることで胃が大きく膨張する状態を指します。そして、膨らんだ胃が自らの重みでねじれてしまった状態が「胃捻転」です。この捻転が起こると胃への血流が遮断され、短時間で壊死が進み、全身状態が急激に悪化します

この病気は時間との勝負です。放置すると、早ければ数時間で命に関わる恐れがあるため、一刻も早い対応が欠かせません。

また、グレート・デーンやシェパード、ラブラドール・レトリーバーなどの大型犬に多く見られ、健康に見える犬でも突然発症することがあります。そのため、日頃からの観察と正しい知識が重要です。

主な症状と早期発見のポイント

胃拡張・胃捻転は、以下のような進行段階に応じていくつかの特徴的な症状が現れます。

<初期症状(軽度)>
・落ち着きがなくなる
・よだれが増える
・お腹がやや張って見える

これらの変化は一見ささいに見えますが、胃の内部で異常が始まっている可能性があります。

<中期症状(危険段階)>
・嘔吐しようとするが何も吐けない
・お腹がパンパンに膨らんでいる
・呼吸が早くなる

この段階では症状が明確になっており、放置すると数時間で重症化する危険があります。

<重度(緊急症状)>
・ぐったりして動かなくなる
・浅く早い呼吸
・チアノーゼ(舌や歯茎が青紫色になる)

これらの症状が見られた場合は、ただちに動物病院を受診してください。なお、動物病院へ連れて行く前に、愛犬の状態をスマートフォンなどで撮影しておくと、診断がスムーズに進むことがあります。

診断方法

動物病院では、以下のような検査を行います。

<視診・触診>
腹部が普段より膨らんでいないか左右差がないかを視診し、軽く触れて張り具合や痛みの有無を確認します。

<レントゲン検査>
胃にガスがたまっているか、また胃がねじれているかどうかを確認します。胃捻転の典型的な所見として、「ダブルバブルサイン」と呼ばれる特徴的な画像が見られることがあります。

<血液検査>
脱水の程度や電解質バランス、内臓機能の状態を確認します。これにより、体の中でどのような変化が起きているかを把握し、治療方針を決定します。

治療方法

胃拡張・胃捻転の治療では、以下を実施します。

<胃の減圧処置>
胃内にたまったガスや内容物を排出する「減圧処置」を行います。口からチューブを挿入してガスを抜く方法や、チューブが入らない場合には腹部に針を刺してガスを抜くこともあります。

<外科手術(胃捻転整復術)>
胃がねじれている場合、多くは緊急手術が必要です。手術では、ねじれた胃を元の位置に戻し、再発を防ぐために胃を腹壁に固定する「胃固定術」も行います。

手術の成功率は早期の対応に大きく左右されます。そのため、重症化する前の受診がとても大切です。

リスク要因と予防策

胃拡張・胃捻転は、いくつかの生活習慣や体質が引き金になることがあります。予防のためには、日頃から以下のような対策をすることが大切です。

<食事と食べ方の工夫>
早食いを防ぐために凹凸のあるフードボウルを使用し、食後は最低30分程は安静にします。なお、1日の食事を3~4回に分ける方法も有効です。

<生活習慣の見直し>
適度な運動と日頃からのストレス管理も大切です。ストレスや興奮状態は消化機能を乱し、胃拡張・胃捻転の引き金となる可能性があります。特に多頭飼いや引っ越しなど、環境の変化がある場合は注意が必要です。 

よくある質問(Q&A)

Q:どの犬種が胃拡張・胃捻転になりやすいですか?
A:グレート・デーン、ドーベルマン、ボルゾイ、スタンダード・プードルなどの大型犬や、胸が深く細長い体型の犬種は特に注意が必要です。遺伝的な要素や体型によってリスクが高まるとされています。

Q:早食いを防ぐにはどうすればよいですか?
A:早食い防止皿を使用してゆっくり食べさせたり、1日3回以上に分けて与えたりすることも効果的です。手で少量ずつ与えるのも一つの方法です。

Q:散歩や運動の後に気をつけるべきことはありますか?
A:運動後すぐの食事は避け、最低でも30分~1時間は間を空けるようにしましょう。逆に、食後すぐの激しい運動も胃捻転の引き金となるため避けてください。また、犬が興奮状態のまま食事をとらないよう、落ち着いた環境を整えることも大切です。

まとめ

犬の胃拡張・胃捻転は、一見すると単なる「お腹の張り」や「落ち着きのなさ」に見える症状から始まります。しかしその裏では、命に関わる重篤な病態が進行している可能性があります。

「元気そうだから大丈夫」と自己判断せず、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院を受診することが大切です。早期に発見して治療すれば、助かる可能性は大きく広がります。

当院では、胃拡張・胃捻転を含めた緊急疾患に迅速かつ適切に対応できる体制を整えております。もし「いつもと違う」と感じたら、お気軽にご相談ください。飼い主様とともに、大切な命を守るお手伝いをいたします。


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