子犬の成長が遅い・食後に嘔吐|肝臓トラブルのサインと門脈シャント|茨城県つくば市の『さくま動物病院』

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2025/08/01

わんちゃん,スタッフブログ

子犬の成長が遅い・食後に嘔吐|肝臓トラブルのサインと門脈シャント

「うちの子、同じ月齢の犬に比べて体が小さい気がする...」「食後に決まって吐いてしまう...」そんな不安を抱いたことはありませんか?それは、「門脈シャント」という肝臓のトラブルが関係しているかもしれません。

門脈シャントは、犬で特に先天的に発生しやすい病気で、放っておくと命に関わることもあります。一方で、早期に発見し、適切な治療を行えば健康な生活を取り戻すことも可能です。

そこで、今回は犬の門脈シャントについて、症状や診断方法、治療方法などをご紹介します。

門脈シャントってどんな病気?

門脈シャントとは、肝臓につながる「門脈」と呼ばれる血管に異常が起こり、本来肝臓で解毒されるべき毒素がそのまま全身に回ってしまう病気です。

正常であれば、消化管から吸収された栄養や毒素は門脈を通って肝臓へ送られ、毒素が無害な状態に分解された後に全身へ流れていきます。しかし、門脈シャントでは門脈と大静脈の間に「シャント血管」と呼ばれる異常な血管が存在します。このシャントを経由して毒素を含んだ血液が肝臓を通らずに全身に流れてしまうため、さまざまな症状を引き起こします。

この病気の多くは、生まれつきの血管異常によって起こります。特にヨークシャーテリア、シーズー、マルチーズといった小型犬種で多く見られる傾向があります。子犬の段階で症状が現れることも多く、成長が遅れていたり、体調に異変が見られたりする場合には注意が必要です。

こんな症状があったら要注意!見逃せないサイン

門脈シャントでは、体内に解毒されない毒素が巡ることで、以下のような症状が見られるようになります。

<よく見られる症状>
食後の嘔吐
食欲不振
元気がない

<行動の変化>
毒素が脳に回ることで、ふらつきや反応が鈍くなる、ぼんやりするなど、普段とは異なる行動が現れることがあります。

<危険な症状>
症状が進行すると、けいれんや意識がもうろうとするなど、命に関わる状態に至る場合もあります。

これらは、食後30分から2時間の間に症状が現れやすいという特徴があります。そのため、日頃の様子に注意して観察することが大切です。

診断方法・検査方法

門脈シャントを正しく診断するためには、段階を追った検査が必要です。以下は一般的な診察の流れです。

①問診と身体検査
最初に飼い主様から症状の経過や日常の様子を伺います。その後、体温や体重の測定、聴診・触診などを通じて、全身の状態を把握します。

②血液検査
門脈シャントが疑われる場合は、血液中のアンモニア濃度や肝臓に関する数値を確認します。また、食前・食後の総胆汁酸値を測ることで、肝機能の状態もチェックします。ただし、血液検査のみで確定診断に至ることは難しいため、追加の画像検査が必要です。

③超音波検査
お腹の中をリアルタイムに観察できる超音波検査では、異常な血管構造を確認できることがあります。

④CT検査
シャント血管の存在を正確に把握するためには、造影剤を使ったCT検査が有効です。立体的な画像で詳細な血管の構造を確認でき、確定診断につながります。ただし、CT検査が可能な施設は限られており、必要に応じて二次診療施設をご紹介することになります。

このように、診断が確定するまでに複数回の検査が必要になるケースもあるため、根気強く通院しながら状態を見極めることが重要です。

治療方法

門脈シャントの治療方法には、「内科的治療」と「外科的治療」があります。それぞれの特徴については以下の通りです。

<内科的治療>
内科的なアプローチでは、症状の緩和を目的とした対症療法が行われます。具体的には、ラクツロースといった便通を促す薬剤や、アンモニア産生を抑える抗生物質を使用するほか、肝臓に負担をかけない低たんぱくの療法食に切り替えたり、点滴で体調を整えたりします。ただし、これらの治療は根本的な解決には至らず、継続的な管理が必要となります。

<外科的治療>
完治を目指すには、異常なシャント血管を外科的に閉じる手術が必要です。場合によっては一度に血管を完全に閉塞できず、2回に分けて手術を行うこともありますが、手術の成功率は高く、多くの犬が術後に健康を取り戻しています。特に若齢での早期発見・手術によって、生活の質が大きく改善される可能性があります。

よくある質問(Q&A)

Q:門脈シャントは遺伝しますか?
A:はい、遺伝的な要因が関与していると考えられており、特定の犬種で発生率が高くなる傾向があります。

Q:手術後は普通の生活ができますか?
A:はい。手術が成功すれば、その後は通常どおりの生活を送れるようになり、寿命を全うできるケースも多くあります。

まとめ

子犬の成長が他の犬に比べて遅れている、食後に吐く、元気がないといった症状が見られる場合、門脈シャントが隠れている可能性があります。特に小型犬種であるヨークシャーテリアやシーズー、マルチーズでは先天的に起こりやすいため、気になる症状があれば早めに動物病院を受診することが大切です。

治療が遅れると重篤な神経症状に進行してしまうこともありますが、手術により健康を取り戻すことができる可能性が十分にあります。

当院では、門脈シャントをはじめとする肝臓疾患に対して適切な検査・診断・治療を行っています。ご不安な点があれば、いつでもご相談ください


茨城県つくば市・牛久市・土浦市を中心に動物診療を行う

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