フィラリア症は、蚊によって感染する感染症です。感染した動物の血を吸った蚊に刺されることでフィラリアの幼虫が犬や猫の身体に寄生します。
この病気は「犬糸状虫」とも呼ばれるように、犬にだけ感染する病気と思われがちですが、実は猫でも感染する病気です。
今回は猫のフィラリア症について、治療方法や予防方法など猫の飼い主様も知っておくべき情報をご紹介します。
フィラリア症ってどんな病気?
フィラリア症は蚊に刺されることで感染します。
蚊がすでにフィラリアに感染した犬や猫の血を吸うと、血液中のミクロフィラリアというフィラリアの幼虫も同時に蚊の体内に入ります。ミクロフィラリアが蚊の体内で成長し、約0.2mmの感染子虫となります。
次に、その蚊がフィラリアに感染していない犬や猫を刺すと、そのタイミングで感染子虫が犬や猫の体内に入り、新たな感染が成立します。
その後、感染子虫は犬や猫の体内でさらに成長して成虫となり、最終的には心臓や肺に寄生します。フィラリアは犬糸状虫症とも呼ばれ、成虫になると体長20〜30cmほどの糸状の細長い形に成長します。
これらの成虫が心臓や肺に多数寄生すると、心臓や血管の循環が妨げられ、呼吸困難を引き起こします。
猫のフィラリア症の症状
犬のフィラリア症ではほとんどの場合、心臓に症状が現れますが、猫のフィラリア症は主に肺に症状が現れます。猫は犬に比べてフィラリアに対する抵抗力が強いため、フィラリアが体内で成長しにくく、はっきりとした症状が現れないこともあります。
しかし、猫の体内でフィラリアの幼虫が死亡すると、「犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)」と呼ばれる肺血管の急性炎症が発生し、下記の症状が現れます。
・喘息
・咳
・呼吸困難 など
さらに、成虫の死骸が肺血管に詰まると、急速に症状が悪化し、急死するリスクもあります。
猫のフィラリア症は、無症状から急激に悪化することがあるため、診断が難しく、一度感染すると完治させるのも困難な病気です。そのため、予防が非常に重要です。
猫がフィラリア症にかかったかどうかの診断方法
犬の場合、少量の血液を用いて行う優れた検査方法がありますが、猫の場合、同様に正確な検査方法がありません。そのため、フィラリアに感染しているかどうかを見分けるのが非常に困難です。
そのため、猫のフィラリア症は、結果を総合的に判断して診断を行います。
・臨床症状
・抗原検査
・フィラリア予防歴の有無
・心臓のエコー検査 など
猫のフィラリア症の治療法
犬のフィラリア症には駆虫薬があるのに対し、猫のフィラリア症には有効な治療法がありません。そのため、治療は咳や呼吸困難などの症状を緩和する対症療法となります。
寄生した成虫を取り除く外科手術もありますが、呼吸の状態が悪い猫に全身麻酔をかけるとリスクが高まるため、ほとんどの場合、手術はあまり選択されません。
手術を行ったとしても、肺に症状が残ることが多いため、投薬治療を続ける必要があります。
フィラリア症の予防法
フィラリア症の予防は極めて重要です。
スポットタイプ(背中に垂らすタイプ)の予防薬を毎月1回投与することで、簡単にフィラリア症を防ぐことができます。
まとめ
完全室内飼いの猫でも油断することはできません。窓やドアの隙間から蚊が侵入することがあり、それによってフィラリアに感染する可能性があります。そのため、必ず毎月フィラリア予防を実施することが重要です。
予防薬を忘れずに投与することで、愛猫の健康を守ることができます。
予防に関してご不明点などございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
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