「昨日から何度も吐いている」
「大好きなごはんを全く食べなくなった」
「なんとなく元気がなく、ぐったりしている」
このような様子が見られると、「少し様子を見ても大丈夫だろうか」と悩まれる飼い主様も多いのではないでしょうか。
犬の嘔吐や食欲不振は、一時的な胃腸の不調によって表れる場合もあります。一方で、早めの治療が必要な病気が隠れているケースも少なくありません。その代表的な病気のひとつが急性膵炎です。
急性膵炎は一年を通して発症する可能性がありますが、特に夏場は注意が必要です。BBQや焼き肉、お盆などで人の食事を口にする機会が増えたり、盗み食いをしたりすることで発症につながる場合があります。
重症化すると命に関わることもあるため、「何度も吐く」「食欲がない」といった症状を軽く考えないことが大切です。
今回は、犬の急性膵炎とはどのような病気なのか、症状や原因、受診の目安について解説します。
犬の急性膵炎とは?
急性膵炎は、お腹の中にある膵臓に急激な炎症が起こる病気です。
膵臓には、食べ物を消化するための消化酵素を作ったり、血糖値を調節するホルモンを分泌したりする大切な役割があります。健康な状態では、消化酵素は腸に送られてから働き始めます。
しかし、何らかのきっかけで膵臓の中で消化酵素が活性化すると、本来消化するはずの食べ物ではなく、自分自身の膵臓を消化するように働き、炎症を起こしてしまいます。その結果、強い炎症が起こり、急性膵炎を発症します。
症状の程度はさまざまで、軽い胃腸炎のように見える場合もあれば、全身状態が急激に悪化して入院治療が必要になるケースもあります。重症化すると、命に関わることもあるため注意が必要です。
また、急性膵炎は胃腸炎と似た症状が表れるため、飼い主様だけで見分けるのは簡単ではありません。
「吐いているから胃腸炎だろう」と自己判断してしまうと、治療が遅れてしまう可能性もあります。そのため、症状が続く場合や元気がない場合は、早めに動物病院を受診することが大切です。
急性膵炎で見られる症状|こんなサインは要注意
急性膵炎では、消化器症状を中心にさまざまな異変が表れます。
初めは軽い不調に見えても、短時間で悪化する場合があるため、小さな変化も見逃さないようにしましょう。
特に見られやすい症状は、以下のとおりです。
・繰り返し吐く
・下痢
・食欲が落ちる、全くごはんを食べない
・元気がなく、ぐったりしている
・お腹を触られるのを嫌がる
・お腹が痛そうな様子を見せる
・背中を丸めた姿勢を続ける
・水分を十分に飲まなくなる
中でも特徴的なのが、お腹の痛みによって背中を丸めるような姿勢をとる場合があることです。じっと動かなくなったり、抱っこを嫌がったりする様子が見られる犬もいます。
さらに、嘔吐や下痢が続くと脱水が進み、全身状態が悪化するおそれがあります。ぐったりして反応が鈍くなったり、水も飲めなくなったりした場合は、早急な対応が必要になるケースもあります。
「食べ過ぎただけだろう」「昨日お肉を食べたから胃がもたれたのかな」と考えて様子を見てしまう飼い主様もいらっしゃいます。
しかし、急性膵炎は初期症状だけでは胃腸炎との区別が難しい病気です。嘔吐や食欲不振が続く場合や、元気がない様子が見られる場合は、自己判断せずに動物病院へ相談することをおすすめします。
なぜ急性膵炎になるの?|当院でよくある原因と注意したい食べ物
急性膵炎は、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
原因を1つに特定できない場合もありますが、日常診療では食事がきっかけになっているケースが少なくありません。
当院でも比較的多いのが、お肉や脂肪分の多い食べ物を食べてしまったあとに体調を崩して来院されるケースです。
例えば、以下のような食べ物には注意が必要です。
・BBQのお肉
・焼き肉
・唐揚げや天ぷらなどの揚げ物
・脂身の多い肉類
これらの食べ物は脂肪分が多く、犬の膵臓に大きな負担をかける可能性があります。
また、盗み食いやゴミ箱あさりによって一度に大量の食べ物を口にしてしまう「多食」も、急性膵炎のきっかけとしてよく見られます。
特に夏場は、BBQやお盆などで人が集まる機会が増えます。食卓から落ちたお肉を食べてしまったり、ごみ袋の中の食べ残しをあさったりする事故も少なくありません。
そのほかにも、肥満や高脂血症などの基礎疾患が関係して発症する場合や、薬剤、ほかの病気が影響して膵炎を起こす場合もあります。
原因はさまざまですが、「少しくらいなら大丈夫」と人の食べ物を与えたり、目を離した隙に盗み食いを許したりしないよう、日頃から環境を整えておくことが大切です。
どんな時に受診すべき?|様子見しないで受診してほしいケース
犬は、一時的な胃腸の不調でも吐くことがあります。
そのため、「少し吐いただけだから様子を見よう」と考える飼い主様も少なくありません。
しかし、急性膵炎をはじめ、重い病気が隠れている場合もあるため、以下のような症状が見られる場合は早めに受診しましょう。
・1日に3回以上吐いている
・全くごはんを食べない(食欲廃絶)
・ぐったりして元気がない
・水を飲まない
・お腹を痛がる、お腹を触られるのを嫌がる
・嘔吐に加えて下痢も続いている
当院では、「1日に3回以上の嘔吐」や「食欲廃絶(全くごはんを食べない状態)」が見られる場合は、様子を見ずにご来院いただくようお伝えしています。
急性膵炎はもちろん、消化管閉塞や重度の胃腸炎、内臓の病気など、早急な治療が必要な病気が隠れている可能性もあります。
特に、ぐったりして反応が鈍い、水も飲めない、お腹を強く痛がるといった様子が見られる場合は、病状が進行している可能性も考えられます。
緊急対応が必要になる場合もありますので、ご来院の際は事前にお電話でご連絡いただくと、よりスムーズに診察をご案内できます。
「もう少し様子を見よう」と迷うよりも、「早めに診てもらおう」という判断が、早期発見・早期治療につながる場合があります。
動物病院ではどのように診断・治療するの?
急性膵炎が疑われる場合は、まず症状がいつから始まったのか、何を食べたのか、嘔吐や下痢の回数、食欲の有無などを詳しくお伺いします。
そのうえで、身体検査を行い、必要に応じて血液検査や超音波(エコー)検査などを組み合わせながら診断を進めます。
血液検査では、膵炎が疑われる数値だけでなく、脱水の程度や肝臓・腎臓など全身の状態も確認します。また、 エコー検査では膵臓の腫れや周囲の炎症の有無を調べるとともに、ほかの病気が隠れていないかも確認します。
これらの検査結果を総合的に判断し、膵炎の重症度や全身状態を評価したうえで、その子に適した治療方針をご提案します。
治療では、脱水を改善するための点滴をはじめ、吐き気止めや痛みを和らげる薬などを用いて全身状態の安定を目指します。
症状が軽い場合は通院で経過をみられることもありますが、嘔吐が続いている場合や脱水が進んでいる場合、全身状態が悪い場合には入院管理が必要になることもあります。
また、当院ではインフォームド・コンセントを大切にしています。検査結果や現在の状態、考えられる治療法について丁寧にご説明し、飼い主様のお気持ちも伺いながら、ご納得いただける治療方針を一緒に考えてまいります。
急性膵炎を防ぐために日常生活で気を付けたいこと
急性膵炎は、さまざまな要因が重なって発症するため、完全に防ぐことは難しい病気です。しかし、日頃の食事や生活環境を見直すことで、リスクを減らせる場合があります。
特に意識したいポイントは、以下のとおりです。
・人の食べ物は与えない
・BBQやお盆などのイベントでは誤食を防ぐ
・ゴミ箱や食卓を整理し、盗み食いできない環境をつくる
・適正体重を維持する
特に夏場は、家族や親戚が集まる機会が増えます。「少しだけだから」とお肉や揚げ物を与えてしまったり、食卓から落ちた食べ物を口にしてしまったりする事故も少なくありません。
また、前述したようにゴミ箱の中にある食べ残しを一度に大量に食べてしまうケースも見られます。愛犬が自由に近づけない場所にゴミ箱を置くなど、普段から環境を整えておくことが大切です。
さらに、肥満は急性膵炎のリスクを高める要因のひとつと考えられています。適正体重を維持し、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
まとめ
急性膵炎は一年を通して発症する可能性がありますが、BBQやお盆などで人の食べ物に触れる機会が増える夏場は、特に注意したい病気です。
何度も吐く、食欲がない、ぐったりしている、お腹を痛がるといった症状は、急性膵炎のサインかもしれません。特に「1日に3回以上吐く」「全くごはんを食べない」場合は、様子を見続けず、できるだけ早く動物病院へ相談しましょう。
早い段階で原因を調べ、適切な治療を始めることで、愛犬の負担を軽減できる可能性があります。
当院では、犬の嘔吐や食欲不振をはじめとする消化器症状について、身体検査や血液検査、超音波(エコー)検査などを組み合わせながら原因を丁寧に調べ、それぞれの状態に合わせた治療をご提案しています。
「様子を見ていて大丈夫なのか判断できない」と迷われた際も、お気軽に当院までご相談ください。







